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変形性膝関節症に対する理学療法【エクササイズは痛覚閾値の改善に有効か】

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タイトル

Association of exercise therapy and reduction of pain sensitivity in patients with knee osteoarthritis: a randomized controlled trial

DOI: 10.1002/acr.22375

研究デザイン

ランダム化比較試験

目的

近年、変形性膝関節症の患者は末梢性感作、中枢性感作によって痛覚過敏が
生じていることが報告されている.
よって、末梢性感作、中枢性感作のメカニズムに焦点を当てた疼痛治療が
必要となる.
現在、どのようなエクササイズが変形性膝関節症の患者に影響を
与えるかは不明である.
したがって、本研究の目的は12週間のエクササイズが変形性膝関節症患者の
疼痛感度に及ぼす影響を検証することとした.

方法

取り込み基準
①40歳以上
②膝OAの診断あり(X線画像)
③BMI 20~35


除外基準
①3カ月以内の運動療法歴
②全身性疾患、自己免疫疾患
③下肢の人工関節の既往
④重度の心血管疾患
⑤頸椎・腰椎の神経学的欠損
⑥広範囲・局所の疼痛症候群(線維筋痛症など)

研究方法

60名の患者がランダムに2つのグループに割り当てられた.


 エクササイズグループ
 (Exercise therapy group)

 コントロールグループ
 control group

参加者の基礎情報は以下を参照

エクササイズグループ

エクササイズは以下の2つから構成された.

・ウォームアップ(自転車エルゴメーター)
・サーキットプログラム

サーキットプログラムは
①コアスタビリティ訓練
②股関節スタビリティ訓練
③股関節筋力トレーニング
④膝関節協調性トレーニング
⑤膝関節筋力トレーニング
⑥機能的エクササイズ

以下にサーキットプログラムの一例を添付
詳細は本文にある添付資料を参照

※エクササイズは週3回を12週間実施
※一回のエクササイズは60分間実施

コントロールグループ

コントロールグループに割り当てられた参加者は
研究期間中の12週間は運動を行わないように指導された.

参加者には研究終了後に別の研究における運動に招待された.

アウトカム

以下のアウトカムを開始時12週(介入後)で測定した.

  • 疼痛閾値:Pressure Pain Thresholds (PPTs)
  • 痛みの時間的加重:Temporal Summation (TS)
  • 身体機能:Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score (KOOS)
結果

疼痛閾値:Pressure Pain Thresholds (PPTs)

両群間で比較すると
エクササイズ
グループの方が疼痛閾値の優位な改善を示した.

効果量(effect size):0.62

痛みの時間的加重:Temporal Summation (TS)

両群間で比較すると
エクササイズグループの方が優位な改善を示した.

効果量(effect size):0.62

身体機能:Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score (KOOS)

KOOSの下位尺度である痛みスコアのみ
エクササイズグループで優位な改善を示した.

効果量(effect size):0.71

解説

今回は変形性膝関節症に対してエクササイズによる
疼痛閾値の効果を検証した論文を紹介しました.

結果としては12週間のエクササイズは痛覚感受性を高めて
疼痛の軽減に有効であることが示されました.

近年では運動により疼痛が緩和する
(exercise-induced hypoalgesia:EIH)メカニズムが報告されており
運動により鎮痛物質である内因性オピオイドの放出が期待できることが
研究されています.

今回の結果を踏まえると、
運動療法は疼痛メカニズムに有益な効果があることが
分かりました.

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