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変形性膝関節症に対する理学療法【膝関節周囲の安定化エクササイズの有効性】

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タイトル

Knee joint stabilization therapy in patients with osteoarthritis of the knee:
a randomized, controlled trial

DOI: 10.1016/j.joca.2013.05.012

研究デザイン

ランダム化比較試験

目的

本研究の目的は膝関節の不安定性を有する変形性膝関節症に対して
膝関節に対しての安定化トレーニングに焦点を当てた運動と
一般的な筋力トレーニングに焦点を当てた運動とを比較して
その有効性を検証することである.

方法

取り込み基準
①アメリカリウマチ学会で膝OAの診断基準を満たす
②40歳~75歳
③自覚的および生態力学的に膝関節の不安定性がある

※自覚的:
過去3カ月以内で膝崩れや膝がガクガクする症状(buckling,shifting,giving way)あり

※生態力学的:
ハムストリングスの筋力低下、内反・外反の不安定性あり

除外基準
①膝OA以外の関節炎
②活動制限が生じる合併症あり
③TKA術後または今後TKA予定
④重度の膝の痛み(NRS 8以上)
⑤オランダ語でコミュニケーション不可

研究方法

159名の患者がランダムに2つのグループに割り当てられた.


 膝関節の安定化エクササイズグループ
 (experimental group)

 コントロールグループ
 control group

参加者の基礎情報は以下を参照

膝関節の安定化エクササイズグループ

3つの段階に分けてエクササイズを実施

・膝関節周囲の安定化エクササイズ(1~4週)
・筋力トレーニング+安定化エクササイズ(5~8週)
・機能的活動+筋力トレーニング+安定化エクササイズ(9~12週)

膝関節周囲の安定化エクササイズ(1~4週)
静的・動的な運動を通して固有受容器の精度に焦点を当てて実施.
患者が膝の安定化に意識できるように低強度で行った.
エクササイズは10回を3セット実施.
また、3セッションの患者教育(膝OAに関する情報、自己管理方法など)を実施.
エクササイズ中は膝が正中位を保持できるように
理学療法士から言語的・触覚的なフィードバックを受けた.

筋力トレーニング+安定化エクササイズ(5~8週)
筋持久力の向上を目的として強度は徐々に増強させた.
エクササイズは15回を3セット実施.
膝関節周囲の安定化エクササイズは難易度を徐々に増強させた.

機能的活動+筋力トレーニング+安定化エクササイズ(9~12週)
患者に合わせた機能的な活動と有酸素運動を実施.
筋力トレーニングと膝関節周囲の安定化エクササイズの難易度は
徐々に増強させた.

膝関節周囲の安定化エクササイズの一例

※エクササイズは週2回を12週間実施
※一回のエクササイズは60分間実施
※ホームエクササイズは週5回行うよう指導

コントロールグループ

2つの段階に分けてエクササイズを実施

筋力トレーニング(1~8週)
機能的活動+筋力トレーニング(9~12週)

最初の4週は膝OAに関する教育に加えて、低強度での筋力トレーニングを実施.
5週~8週では筋持久力のトレーニング、9週目から機能的な活動と有酸素運動
を実施した.

※エクササイズは週2回を12週間実施
※一回のエクササイズは60分間実施
※ホームエクササイズは週5回行うよう指導

アウトカム

以下のアウトカムを開始時、6週(介入中)、12週(介入後)38週で測定した.

  • 機能:WOMAC physical function subscale;プライマリーアウトカム
  • 疼痛:NRS
  • 自覚的改善度:Global perceived effect (GPE)
  • 膝関節不安定性:Knee instability, self-reported
  • 筋力:大腿四頭筋、ハムストリングス
  • 機能テスト:Get up and go test
  • Patient Specific Functioning List (PSFL)
  • Walking Questionnaire (WQ35)
  • Climbing Stairs Questionnaire (CStQ15)
  • Questionnaire Rising and Sitting down 30(QR&S39)
結果

機能:WOMAC physical function subscale

両群ともにWOMACのスコアはMCIDを満たし、優位に改善したが
両群間で比較すると優位差はなし.

疼痛:NRS

両群ともに介入後は優位に痛みが改善したが、
両群間で比較すると優位差はなし.

自覚的改善度:Global perceived effect (GPE)

介入後の12週時点では
膝関節の安定化エクササイズグループの方が
患者の自覚的改善度が優位に高かった.

自覚的改善度 介入群:87% コントロール群:73%

その他のアウトカム

その他のアウトカムに関しては
両群間で優位差は認められなかった.

解説

今回は膝関節の不安定性を生じる変形性膝関節症に対して
膝関節周囲の安定化エクササイズの有効性を検証した論文を紹介しました.

結果としては膝関節周囲の安定化エクササイズを併用しても
痛みや身体機能の改善は優位差が認められませんでした.

両グループともに介入後は痛みと身体機能の改善が示されました.
論文の筆者はこの背景として、ガイドラインに従ったプログラム(筋力強化、
患者教育、有酸素運動)を取り入れたからではと述べています.

今回の論文をふまえると、膝関節周囲の安定化エクササイズを行っても
付加価値は得られないという結果が分かりました.

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