Clinical evaluation of the shoulder shrug sign
PMCID: PMC2565053 DOI: 10.1007/s11999-008-0331-3
シュラグサインとは肩を90°挙上する際に肩甲骨が挙上する、肩すくめ徴候である.
シュラグサインは腱板断裂と関係していると報告されている.しかし、筆者の臨床経験
に基づくと、シュラグサインは腱板損傷の診断徴候ではなく、可動域や筋力と関連
していると仮定している.
今回の研究の目的はシュラグサインを使用して以下の仮説を検証することである.
①腱板損傷に対しては感度が低い
②シュラグサイン陽性の人は可動域や筋力低下が関与している
前向きコホート研究
取り込み基準
将来的に肩の手術が必要な患者
手術の4週間以内に全ての患者の基本情報や身体検査を行った.
また、患者の主訴(安静時痛、夜間時痛、運動時痛、挙上時痛、その他)を
VASを使用して評価した.
全ての患者の左右の肩関節を検査した.
・自動・他動の関節可動域
・MMT
・上肢の神経学的検査
・他の整形外科テスト
Neer impingement sign
Kennedy-Hawkins impingement sign
Gagey sign(下方の関節包の拘縮を評価)
検査者は患者に左右の肩関節を外転するように声かける.
陽性判定は90°外転時に肩甲帯または肩が全体的に挙上した場合に陽性.
最終診断は手術前のレントゲン画像や術中所見で確定とした.
シュラグサインが陽性の患者は982人中504人(51.3%)であった.
シュラグサイン陽性患者で最も関連があった診断は
癒着性関節包炎(94.7%)、肩関節炎(OA、リウマチ、骨頭壊死) 90.5%
広範囲の腱板損傷(74.5%)、完全腱板損傷(62.1%)

評価精度は以下の図を参照
癒着性関節包炎の陽性尤度比 1.877
肩関節炎(OA、リウマチ、骨頭壊死)の陽性尤度比 2.097
広範囲の腱板損傷の陽性尤度比 1.485

シュラグサイン陽性患者と肩関節検査の相関に関しては
こちらの図を参照



外転と外旋の筋力低下に加えてdrop-arm signが陽性
の場合はオッズ比が32.634.
外転の筋力低下、年齢、夜間時痛、外旋の自動・他動可動域もオッズ比が
他の因子と比較して高い結果となった.
今回は手術する肩関節患者を対象にシュラグサイン陽性と陰性に分けて
診断や可動域・筋力などの肩の状態を検査することで
シュラグサイン陽性と相関がある因子を特定した観察研究です.
筆者の結論としては可動域と筋力の低下が関係しているのではとしています.
また、従来では腱板損傷がシュラグサイン陽性に関わるという研究がありましたが
本研究では癒着性関節包炎、肩関節炎、広範囲の腱板損傷がシュラグサイン陽性
と関係していると結論づけています.
今後、臨床でシュラグサイン陽性の症例を担当した場合は
外転や外旋の筋力低下、屈曲・外転・外旋の可動域を
確認してみてもいいかもしれません.
シュラグサインの多くは肩関節拘縮が深く関与していきます。
臨床で関節拘縮の改善に困っている方はオンラインセミナーである
赤羽根 良和 先生の「肩関節拘縮の見方と運動療法」
がとても参考なると思います。
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