今回は私が実践している英語論文を読む際のコツを紹介したいと思います。
英語論文が読めるようになることで今まで以上に臨床の疑問を解決してくれる
場面が増えると思います。
また、エビデンスレベルが高い研究や日本では報告されていない研究など
英語論文が読めることでのメリットは数多くあるので、今回を機会に英語論文
にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
英語論文を読みたいけど読み方がわからない
英語論文の読み方のコツを知りたい
臨床での疑問が解決できない
英語論文が読めることのメリット
そもそもなぜ日本語で発表・報告された論文ではなく
海外で発表された英語論文を読む必要があるの?
と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
それはズバリ「研究報告の数の違い」であると私は考えています。
例えば膝が痛くて受診して、変形性膝関節症と診断を受けた患者さんを担当した際に
どのような理学療法が痛みの改善に有効なのか疑問に思ったときに
多くの人が何かしらの論文検索サイトを活用して変形性膝関節症に有効な
理学療法プログラムは何かを検索すると思います。
そこで今回は
日本の論文検索サイトのJ-STAGE、Google Scholar、メディカルオンライン
海外の論文検索サイトのPubMed
の4つの検索サイトを比較して何件ヒットするのかを検証してみました。
検索の用語は一般的に変形性膝関節には筋力強化訓練が有効であるという
報告を参考に「変形性膝関節 筋力強化訓練」だけ入力して検索しています。
まず、J-STAGEでは86件ヒット
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2021/03/cats-121.jpg)
次にGoogle Scholarでは2件のヒット(内英論文1件)
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2021/03/cats-122.jpg)
次に有料サイトであるメディカルオンラインでは35件のヒット
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2021/03/cats-123.jpg)
最後に英語論文の無料検索サイトのPubMedでは1390件のヒット
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2021/03/cats-124.jpg)
今回は「変形性膝関節 筋力強化訓練」 と検索して何件ヒットしたのかを
比較してみましたが、英語論文サイトのPubMedの方が圧倒的にヒット数が
多く、数多くの情報を収集できることが分かったと思います。
このように英語論文が読めるだけで多くの情報から信頼できる情報を
自分なりに選択できることが最大のメリットだと考えています。
英語論文の検索ツール
英語論文の検索サイトはいくつかありますが
今回は私は主に使用している検索サイトを紹介したいと思います。
PubMde
まずは世界的に有名なサイトであるPubMed(パブメド)です。
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2021/03/cats-125.jpg)
無料検索サイトであるため誰でもアクセスすることができます。
PubMedは検索フィルターが充実しているので
メタアナリシス、ランダム化比較試験など研究デザインによって
絞り込みができるとても便利な機能があります。
PEDro
次に紹介するのはPEDro(ペドロ)です。
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2021/03/cats-126.jpg)
PEDroもPubMed同様に無料の検索サイトです。
PEDroの優れている点は
PEDro scale(ペドロスケール)という内的妥当性を評価する
スコアリングシステムを活用している点です。
10点満点で10点に近いほど内的妥当性が高い。
要するに研究の信頼性が高い論文であるということになります。
下の写真の右側にスコアがありますが
こちらがPEDro scaleとなっています。
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2021/03/cats-127.jpg)
The Cochrane Library
最後に紹介するのがThe Cochrane Library(コクラン・ライブラリー)です。
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2021/03/cats-128.jpg)
The Cochrane Libraryの特徴はシステマティックレビューを中心に
論文の情報収集が出来ることです。
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2021/03/cats-129.jpg)
こちらのロゴマークはシステマティックレビューで
よく見かけるフォレストプロットをモチーフにしており
このことからもシステマティックレビューに特化した検索サイトである
ことが分かります。
英語論文の構成
実際に英語論文を読む前に
英語論文の構成を把握することで理解度がグッと高まります。
そのため、まずは英語論文の構成を理解しましょう。
- Title:タイトル
- Abstract:要約
- Introduction:序論
- Methods:方法
- Results:結果
- Discussion:考察
- Conclusions:結論
Title:タイトル
まずはタイトルです。
一番初めに読むべき項目であり、自分が調べたい内容と検索でヒットした論文が
マッチしているのかをタイトルから判断できます。
Abstract:要約
アブストラクト(要約)は論文の大まかな概要を理解するために使用されます。
慣れてくると数分の時間で簡単に論文の概要が理解できます。
アブストラクトを読むことで、その後、論文を読む中で内容が頭に入りやすく
なるため、大まか概要を把握するためにもアブストラクトは読むべきかなと
思います。
しかし、アブストラクトだけ読んで論文を理解した気になるのは
絶対にやめましょう。
アブストラクトだけでは内的妥当性・外的妥当性が判断できない
ので、アブストラクトだけを読んで、その情報を患者さんに実際に
適応するのはやめましょう。
内的妥当性・外的妥当性に関して分からない方は
こちらの記事を参考にしてもらえたらと思います。
Introduction:序論
このIntroductionの章では
疫学や先行研究などの紹介や研究の目的、著者の仮説が述べられています。
例えば
先行研究では○○○○と●●●●を比較した研究はないため
今回は○○と●●を比較した研究を行いました。
というようになぜこのような研究を行おうとしたのか把握できます。
Methods:方法
この章では
どのような患者さんに、どのような治療を行ったのか
また、どのようなアウトカムを指標にしたのかなどが
述べられています。
この方法のところはPICOに当てはめて読むと
理解度が高まると思いますのでぜひ活用してみてください。
Results:結果
この結果の章では
介入群とコントロール群を比較して
アウトカムの指標が最終的に良くなったかを述べています。
基本的にはグラフなどで分かりやすくまとめてくれている
論文が多いので、まずはグラフから結果を読み取ることをお勧めします。
Discussion:考察
考察ではIntroductionで筆者が考えた仮説と今回の研究の結果が
一致したかどうかが述べています。
仮に一致しなかった場合は筆者が考える要因が記載されています。
例えば参加者の人数が少なかったやフォローアップ期間が短かった
など研究が終わってみて今後の課題などが述べられています。
Conclusions:結論
最後の結語に関しては
論文のまとめが記載されています。
英語論文の翻訳ツール
英語が読めなくても英語を翻訳してくれるサイトが
多くあるのでこれから紹介するサイトを活用することで
英語論文を読みたいけど英語が苦手で読めないという方も
ぜひ今回を機会にチャレンジしてみてください。
グーグル翻訳
まずは王道の翻訳サイトであるグーグル翻訳です。
無料サイトのため誰でも利用できます。
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2021/03/cats-130.jpg)
DeepL
次に紹介するのはDeepLです。
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2021/03/cats-131.jpg)
こちらも無料・有料サイトとなっており
5000文字以内であれば無料で誰でも活用できるためとても有益です。
これら2つの翻訳サイトを使用することで英語論文が読めますが
デメリットとして英語論文をコピー&ペーストした際に違和感のある
翻訳となってしまう場合が多くあります。
そこで、「Shaper」というツールを活用することで、改行を修正してくれるため
違和感のある翻訳を修正することが出来ます。
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2021/03/cats-133.jpg)
Shaperを通してからDeepLまたはグーグル翻訳にコピー&ペースト
するだけで自然な日本語訳となります。
また、単語だけを知りたいという方は
「ライフサイエンス辞書」がお勧めです。
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2021/03/cats-132.jpg)
こちらの「ライフサイエンス辞書」の変換サービスから
上から2段目の「EtoJ Vocab」をクリックしてもらい、テキストに
翻訳して欲しい文章を張り付けるだけで英単語を簡単に調べることができます。
今まで紹介した
「グーグル翻訳」、「DeepL」、「Shaper」、「ライフサイエンス辞書」
を活用することで英語が苦手な方でも英語論文を読むことができます。
英語論文を読むための前提知識
論文を読む際は英語・日本語に関わらず
ある程度の統計学的理解や内的妥当性の評価が必要になります。
そのため、英語論文を読む中で分からない統計用語はその都度
調べながら読む論文数を増やすことで統計学の知識も増えてきます。
そのため、まずは100%理解するということではなく
論文の概要を大まかに理解することから始めることで英語論文を読むことでの
抵抗感や挫折しないで読むことができると思います。
英語論文の読み方
今回はこちらの論文を参考に英語論文の読み方を紹介したいと思います。
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2021/03/cats-134.jpg)
タイトル
まずは調べたい内容と検索でヒットした論文がマッチしているのかを
タイトルから判断します。
Introduction:序論
次に今回の研究の目的を探しましょう。
一般的には序論の最後に
The purpose of this study~
を探すと今回の論文の目的が記載してあると思います。
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2021/03/cats-135.jpg)
Methods:方法
この方法の章では
・参加者の情報
・アウトカム
・介入方法
主に上記に関して説明します。
参加者の情報
どのような患者が対象になっているのか確認しましょう。
Inclusion criteria:取り込み基準
取り込み基準とはどのような基準をもとに参加者を組み入れたが
記載されています。
Exclusion criteria:除外基準
除外基準とはどのような患者さんを除外したが記載されています。
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2021/03/cats-136.jpg)
アウトカム
どのようなアウトカムを指標にしたのかを見つけましょう。
Outcomes Measuresのところにアウトカムの指標が述べられています。
今回の論文ではLEFSがアウトカムになっていることが分かります。
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2021/03/cats-137.jpg)
介入方法
どのような介入を行ったのかを確認しましょう。
方法の中のinterventionのところに
今回の参加者に対してどのような治療を行ったのかが
記載されています。
紹介している論文は2群間の比較研究のため
それぞれのグループに対しての治療が記載されています。
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2021/03/cats-138.jpg)
Results:結果
最終的に一番気になる内容は
介入した後にアウトカムが良くなったのかだと思います。
そこでResults(結果)の章で
介入群とコントロール群とを比較して
アウトカムに違いがあったのかを確認します。
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2021/03/cats-139.jpg)
上記の点を踏まえながら読むことで
PICOに基づいて論文の全体像が把握できると思います。
ちなみにPICOのことをもっと詳しく知りたい方は
こちらを参考にしてみてください。
まとめ
今回は英語論文の読み方のコツを紹介しました。
英語に苦手意識がある方もいるとは思いますが
英語論文が読めることで情報収集の幅が広がり多くの情報から信頼できる
情報を自分なりに選択できるため
まずは今回、紹介した英語翻訳サイトや論文検索サイトなどを活用して
知りたい情報にアクセルしてみることをお勧めします。
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