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半月板損傷の理学療法

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今回は半月板損傷に対する内容をまとめました。

臨床でも半月板損傷の症例を担当する機会は多いかと思います。

そこで今回は半月板損傷のリハビリテーションを文献を踏まえて
紹介したいと思います。

半月板の役割

半月板は大腿骨と脛骨の間にあり、内側が内側半月板、外側が外側半月板となります。

半月板の主な役割は荷重分散関節軟骨の衝撃吸収関節安定性です。

また、下の図であるように、半月板の外側周辺のみ血行があり(Red-red zone)、
内縁部には血行がありません(White-White zone)。
そのため、損傷部位により手術するべきかを判断します。

松田昌悟 整形外科看護 2014 より図のみ引用

半月板損傷の症状

痛み腫脹、膝屈曲・伸展運動での引っかかり(キャッチング)
断裂した半月板が関節に挟まることで生じるロッキング

主には上記の訴えがあります。

半月板損傷のタイプ

半月板損傷のタイプにより引っかかり(キャッチング)やロッキングを生じやすくなります。
外傷性」か「非外傷」かによって損傷のタイプが異なります。

大石隆幸ら 整形外科看護 2018より図のみ引用

整形外科テスト

整形外科テストは複数ありますが以下の4つがメジャーだと個人的には思っています。

Appley compression test(アプレー圧迫検査)

McMaurray’s Test(マックマレー検査)

Thessaly test(テサリー検査)

Ege’s test(イギー検査)

治療内容

大きく手術保存療法に分かれます。

手術には半月板縫合術半月板部分切除術があります。

保存療法には理学療法薬物療法ステロイド注射などがあります。

手術と保存療法どっちが有効?

手術と保存療法でどちらが治療成績が良いのか議論が分れますが
今回は2つのシステマティックレビューを紹介します。

Giuffrida Aら2020のシステマティックレビューによると
10のRCTが含まれており、手術と保存で痛みと機能障害を比較すると
短期・中期・長期のフォローアップで両群間で優位差がないという
結果になっています。

Li Jら2020のシステマティックレビューによると
6つのRCTを含んでおり、手術と理学療法で痛みと機能を比較しています。
結果としては短期(3カ月)、中期(6カ月・12カ月)では手術群が優位に改善
長期(2年)では有意差なしという結果になっています。

両方の論文を踏まえると
短期・中期では手術の方が成績が良いまたは同様。
長期的には手術でも理学療法でも機能や痛みは同じ成績であると考えられます。

理学療法プログラム

半月板損傷に対してどのような理学療法が適切なのかを病期別に紹介します。

急性期

疼痛コントロール炎症管理を徹底しましょう。

炎症時期であるため炎症管理のためのアイシングや腫脹軽減に努めます。
痛みが強い時期は松葉杖を使用し痛みに応じて荷重を制限しましょう。

可動域訓練は痛みの出ない範囲で行います。

筋力トレーニングは荷重位では痛みが出やすいためOKCでの運動
患部外(股関節・体幹など)トレーニングなどを指導します。

亜急性期~慢性期

痛みや炎症が落ち着いてきたら徐々に負荷量を増やしていきます。

筋力トレーニングはCKCでの運動(スクワットなど)を取り入れましょう。
大腿四頭筋の筋萎縮が進行しないよう配慮しましょう。

可動域訓練も疼痛に応じて徐々に健側と同様の柔軟性を目標に進めます。

慢性期

慢性期ではバランスのトレーニングジリティのトレーニングを導入します。
最終的に趣味やスポーツ復帰が再獲得できるように症例独自のトレーニングも
導入しましょう。

エビデンスのある理学療法は?

Kise NJら2016年の論文では
手術と理学療法を比較した、ランダム化比較試験であり、
2年間のフォローアップ期間でどちらの成績が良いか検証しています。
プライマリーアウトカムはKnee Injury and Osteoarthritis Outcome Score(KOOS)
という患者記入式のアウトカムとなっています。

Kise NJら2016より引用

結果は3カ月、12カ月、24カ月で両群間で優位差はなく
両群ともにKOOSの数値は改善しました。

理学療法を受けたグループは25.3点手術を受けたグループは24.4点
と両群ともに改善の効果は同様でした。

気になるこの研究での理学療法メニューは

・自転車エルゴメーター
・スクワット(両脚、片脚)
・ステップアップ
・不安定板でのバランストレーニング
・ハムストリングスのトレーニング(バランスボールを使用)
・レッグプレス(片脚)
・レッグエクステンション(片脚)
・レッグカール(片脚)
・ホップ動作(左右、前後など)

Stensrud Sら2012より引用
Stensrud Sら2012より引用
Stensrud Sら2012より引用

上記のメニューを1週間2~3回合計12週間実施しました。

詳しくは論文を読んで、自分の症例に適応してよいかを判断してもらえたらと
思いますが、理学療法でも手術と変わらない程度の回復が期待できることが
示されています。

まとめ

今回は半月板損傷に対しての概要や手術と保存療法のエビデンスと
理学療法のエビデンスを紹介しました。

保存療法でも手術に負けないぐらいの治療成績が出せるので
理学療法により痛みや膝関節機能の再獲得ができるように積極的に
介入していくべきだと思います。

引用文献
  • Giuffrida A el al .Conservative vs. surgical approach for degenerative meniscal injuries: a systematic review of clinical evidence. European Review for Medical and Pharmacological Sciences.2020  DOI: 10.26355/eurrev_202003_20651
  • Li J el al. Comparison of Arthroscopic Partial Meniscectomy to Physical Therapy following Degenerative Meniscus Tears: A Systematic Review and Meta-analysis. BioMed Research International .2020 DOI: 10.1155/2020/1709415
  • Kise NJ el al.Exercise therapy versus arthroscopic partial meniscectomy for degenerative meniscal tear in middle aged patients: randomised controlled trial with two year follow-up. BMJ .2016, PMCID: PMC4957588
  • Stensrud S el al. A 12-week exercise therapy program in middle-aged patients with degenerative meniscus tears: a case series with 1-year follow-up. The Journal of orthopaedic and sports physical therapy. 2012, DOI: 10.2519/jospt.2012.4165

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