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上腕骨外側上顆炎に対する理学療法と注射と経過観察の比較研究

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タイトル

Corticosteroid injections, physiotherapy, or a wait-and-see policy for lateral epicondylitis: a randomised controlled trial


DOI: 10.1016/S0140-6736(02)07811-X

目的

今回の研究の目的は上腕骨外側上顆炎に対して理学療法、ステロイド注射、経過観察の3つの群に分けて長期的な効果を調査することである.

方法

取り込み基準
①肘外側部の痛み
②外側上顆の圧痛
③手関節背屈ストレスと痛みあり
④18~70歳

除外基準
①過去6カ月で注射または理学療法の経験がある
②両肘に症状がある
③症状が6週間未満
④頚椎症性神経根症や肘の変形(先天的・後天的)など痛みの原因が他に示唆される
⑤過去1年で肘の骨折や脱臼歴がある
⑥ステロイドが禁忌

研究デザイン

患者はランダムに以下の3つの群に割り当てられた.


グループ①
経過観察(6週間)
グループ②
ステロイド注射(6週間で最大3回可能)
グループ③
理学療法(ストレッチ、超音波、深部横断マッサージ、Home exercise指導)

アウトカム

以下のアウトカムをベースラインと3週、6週、12週、26週、52週でフォローアップした.

  • 全体的な改善度(6段階で評価)
  • 主訴の改善度(NRSで評価)
  • 肘関節の機能障害スコア(10項目の質問票を使用)
  • 患者の満足度(10段階で評価)
  • 握力(無痛・最大)
  • 圧痛閾値
結果

6週時点のアウトカムではステロイド注射群の方が全てのアウトカムで優位に改善した.
しかし、26週と52週では理学療法群の方がステロイド注射より優れる結果となった.
また、理学療法は経過観察よりわずかに優れているが有意差はなかった.

患者に6段階で評価してもらい「完全に回復」「かなり回復」と答えた場合に成功と定義
した場合の成功率は以下の通りである.

 ステロイド注射理学療法経過観察
6週92%47%32%
52週69%91%83%
         Smidt Nら2002より引用

考察

上腕骨外側上顆炎に対してステロイド注射は即時的に改善する
治療選択の一つであると示唆している.
しかし、効果は短期間しか持続せず、長期間のフォローアップを通して
理学療法が最善の治療手段の一つであり、その次に経過観察となった.
ステロイド注射の群は痛みの再発が示されたのは意外かもしれないが、
二つの理由が考えられる.
1つ目はステロイド注射が腱に有害である可能性、
2つ目はステロイド注射後で痛みが軽減するため腕を過剰に
使いすぎてしまい負担がかかった可能性が考えられる.
高確率で改善するのは理学療法だが、経過観察と比較するとその差はわずかであり、
理学療法を治療手段に加えるべきかは議論の余地がある.

解説

上腕骨外側上顆炎に対してステロイド注射と理学療法と何もしない群で比較した研究です.
即時的効果が高いのはステロイド注射ですが、 
副作用もあり再発のリスクもあるため、選択には注意が必要だと思います.
一番、改善度が高いのは理学療法ですが、経過観察する群とは有意差がないため、
この研究では理学療法も有効だけど、経過観察しても効果は一緒ではないかという
結果になっています.

詳細に関してはリンクを貼っているので論文を参照してください.

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