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梨状筋症候群に対する理学療法【マッスルエナジーテクニックの有効性】

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タイトル

Effect of Reciprocal inhibition and Post Isometric relaxation; types of muscle energy technique in Piriformis syndrome ? A Comparative study

DOI: 10.15761/PMRR.1000162

研究デザイン

ランダム化比較試験

目的

梨状筋症候群の治療は外科的手術(梨状筋の外科的リリース、坐骨神経の減圧)と
保存療法(薬物療法、理学療法)がある.
理学療法にはストレッチ、マッサージ、生態力学異常の修正、股関節外転の強化、
コアトレーニング、軟部組織・関節モビライゼーション、筋膜リリース、PNF、
マッスルエナジーテクニック(Muscle energy technique :MET)、超音波が
含まれる.
今回の研究はMETと従来の治療を比較して痛みの改善を比較をすることである.
また、METは相反抑制と等尺性収縮後弛緩の2つの手技を分けて比較した.

方法

取り込み基準
①25~45歳
②2週間以内の痛み
③一側性の痛み
④股関節内旋の可動域低下
⑤VAS 3~6
⑥以下のテストで3つ陽性
・piriformis test
・beatty test
・Freiberg test
・FAIR test
・Sign of Pace & Nagel
・tonic external rotation of hip


除外基準
①股関節・膝・仙腸関節の病変
②脊椎や骨盤由来の神経学的欠損
③下肢長差
④骨折
⑤姿勢の異常

研究方法

45名の患者がランダムに3つのグループに割り当てられた.

グループA
 相反抑制+従来の治療
 (Reciprocal Inhibition(RI)+Conventional intervention)

グループB
 等尺性収縮後弛緩+従来の治療

 (Post Isometric Relaxation(PRI)+Conventional intervention)

グループC
 従来の治療のみ
 (Conventional intervention only)

参加者の基礎情報は以下を参照

相反抑制+従来の治療(グループA)

グループAは
マッスルエナジーテクニックで使用される相反抑制を使用した治療を実施.

患者は健側下の側臥位となり、股関節・膝関節を屈曲位に保持する.
梨状筋を抑制するために、セラピストは内転に対して抵抗を加える.

※収縮時間は7~10秒として、3回繰り返す.
※患者は20%程度の力を発揮する.
※治療は1週間に5回を2週間実施.


※相反抑制とは「主動作筋が収縮すると、拮抗筋が弛緩する」という
 生理学的メカニズムを利用した手技となっています.

等尺性収縮後弛緩+従来の治療(グループB)

グループBは
マッスルエナジーテクニックで使用される等尺性収縮後弛緩を使用した治療を実施.

患者は健側下の側臥位となり、股関節・膝関節を屈曲位に保持する.
患者は股関節外旋方向に力を入れて、セラピストは梨状筋の収縮を促すように
抵抗を加える.

※収縮時間は7~10秒として、3回繰り返す.
※患者は20%程度の力を発揮する.
※治療は1週間に5回を2週間実施.

※等尺性収縮後弛緩とはホールドリラックス手技の考えを基に
 「筋肉は収縮した後に弛緩する」という生理学的メカニズムを利用した
 手技となっています.

従来の治療のみ(グループC)

以下の治療プログラムを実施

・梨状筋に対しての温熱療法

・梨状筋に対してのストレッチ(30秒を3回)

・股関節外転の筋力強化トレーニング(10回を3set)

※治療は1週間に5回を2週間実施.

アウトカム

以下のアウトカムを開始時、2週(介入後)で測定した.

  • 痛み:VAS
  • 可動域:股関節外転、股関節内旋
  • 機能:Lower Extremity Functional Scale (LEFS)
結果

痛み:VAS

各グループともに治療終了後の2週間時点では優位に痛みが改善した.

3群間で比較すると、
グループA(相反抑制)とグループB(等尺性収縮後弛緩)で優位な改善を示した.

可動域:股関節外転、股関節内旋

各グループともに治療終了後の2週間時点では優位に可動域が改善した.

3群間で比較すると、
グループB(等尺性収縮後弛緩)で優位な改善を示した.

機能:Lower Extremity Functional Scale (LEFS)

各グループともに治療終了後の2週間時点では優位に機能が改善した.

3群間で比較すると、
グループB(等尺性収縮後弛緩)
優位な改善を示した.

解説

今回は梨状筋症候群に対してマッスルエナジーテクニック(MET)の
有効性を検証した論文を紹介しました.

結果としては
従来の治療とマッスルエナジーテクニックの等尺性収縮後弛緩を併用
することで痛み、機能、可動域の改善に有効であることが示されました.

マッスルエナジーテクニックの相反抑制と等尺性収縮後弛緩では
等尺性収縮後弛緩(ホールドリラックス手技)の方が優位な改善を示しました.

今回の論文を踏まえると
急性期の梨状筋症候群に対して梨状筋へのホールドリラックス手技は

痛みの改善や機能の改善に有効であることが分かりました.

注意点としては
今回の研究の参加者は発症後2週間以内の症例を対象にしているため
慢性的な梨状筋症候群に対して同じ効果が得られるかは不明となっています.

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