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腰痛に対するクラシフィケーションアプローチ【腰椎伸展運動編】

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タイトル

Effectiveness of an extension-oriented treatment approach in a subgroup of subjects with low back pain: a randomized clinical trial

DOI: 10.2522/ptj.20060297

研究デザイン

ランダム化比較試験

目的

近年の研究では腰痛の症例に理学療法士によるサブグループ分類に
基づいて治療することで良好な結果が得られやすいと報告されている.
Delittoらが提唱しているtreatment-based classification systemには
伸展方向へのアプローチ:extension-oriented treatment approach(EOTA)
が含まれている.
他の著者は伸展方向へのアプローチが有効であるかは中心化現象(centralization)
で特定することが重要であると述べている.
中心化現象とは特定方向の動きによって症状が近位に移動する現象である.
一般的に腰椎伸展アプローチで良好な結果が得られる患者は腰椎伸展運動で
中心化現象が有すると考えられるが、先行研究ではサブグループ分類に
基づいた研究報告はない.
よって、本研究の目的はサブグループ分類に基づいて
体幹筋力強化トレーニングと腰椎伸展運動(EOTA)を比較して
腰椎伸展運動の有効性を検証することである.

方法

取り込み基準
①18~60歳
②臀部より遠位に症状あり
③自動運動で中心化現象(centralization)あり
 自動運動は最初は腰椎伸展運動を立位で10回実施
 次に腹臥位で同様に腰椎伸展運動を10回実施
④腰椎屈曲または腰椎伸展での症状に変化なし
⑤Oswestry Disability Index (ODI) 30%以上


除外基準
①腫瘍
②骨折
③感染症
④妊婦
⑤脊椎手術歴(過去6カ月以内)

研究方法

48名の患者がランダムに2つのグループに割り当てられた.

腰椎伸展運動エクササイズグループ(EOTAグループ)

体幹筋力強化トレーニンググループ

参加者の基礎情報は以下を参照

腰椎伸展運動エクササイズグループ(EOTAグループ)

腰椎伸展運動エクササイズグループに割り当てられた参加者は
腰椎伸展運動での中心化現象(centralization)を目標に以下の
治療プログラムが実施された.

・腹臥位での腰椎伸展運動(10回 3set)

・立位での腰椎伸展運動(10回 3set)

・腰椎モビライゼーション(posterior-to-anterior lumbar mobilization)
 メイトランド手技を用いてグレードⅠ~Ⅳで介入

・腹臥位での腕立て伏せ(10回 1set)
 ※2~3時間おきに実施するように指導
 ※外出中などで困難であれば立位にて実施.

・生活指導
 腰椎の生理的前弯の保持
 20分~30分の長時間座位は控える
 症状が末梢化(peripheralized )する動作は控える

※理学療法は最初の2週は1週間に2回、その後は1週に1回を2週間
 合計4週間で6セッションを実施.

※研究期間中は毎日自主練習を行うように指導.

体幹筋力強化トレーニンググループ

慢性腰痛のシステマティックレビューで体幹の筋力強化トレーニング
が推奨されているため
Hicksらのデザインされた治療プログラムを用いて
以下の治療プログラムが実施された.

・腹部深層筋(腹横筋)のトレーニング

・脊椎安定化運動

※理学療法は最初の2週は1週間に2回、その後は1週に1回を2週間
 合計4週間で6セッションを実施.

※研究期間中は毎日自主練習を行うように指導.

アウトカム

以下のアウトカムを開始時、1週、4週(介入後)6カ月で測定した.

  • 機能:Oswestry Disability Index (ODI)
  • 痛み:NRS
結果

機能:Oswestry Disability Index (ODI)

両群間を比較すると
腰椎伸展運動(EOTA)グループの方が1週、4週、6カ月のODIスコアが
優位な改善を示した.

※青線が腰椎伸展運動グループです.

痛み:NRS

両群間を比較すると
腰椎伸展運動(EOTA)グループの方が1週時点では
NRSの優位な改善を示した.

4週、6カ月では両群間で優位差はなし.

※青線が腰椎伸展運動グループです.
解説

今回は腰椎伸展運動で中心化現象がある参加者を対象に
腰椎伸展運動における有効性を検証した論文を紹介しました.

結果としては
腰椎伸展運動グループでODIが短期・中期で優位な改善を
示しました.
痛みは1週間時点のみ優位な改善を示しました.

近年では腰痛はサブグループ化分類に基づいて治療する流れとなっています.
海外ではこの治療法をTrearment-based classification approachと呼び
腰痛をカテゴリー分類することでエビデンスに基づいた医療の提供が重要
であると言われています.


今回の論文では腰椎伸展で中心化現象する腰痛に対しては
腰椎伸展運動の反復により、
4週間で6回の理学療法を提供すると
ODIスコアは半分まで改善するという結果が示唆されました.

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