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非神経根性腰痛に対するスランプストレッチの有効性

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タイトル

Slump stretching in the management of non-radicular low back pain:
a pilot clinical trial

DOI: 10.1016/j.math.2005.07.002

研究デザイン

ランダム化比較試験

目的

本研究の目的は特定方向の運動を行っても症状が改善しない非神経根性腰痛
に対してスランプストレッチの有効性を検証することである.
スランプストレッチは神経感受性を評価するツールとして知られていたが
最近では治療法の一つにもなっている.
しかし、先行研究ではケースレポートまたはケーススタディーレベル
でとどまっている.
よって、スランプストレッチと腰椎モビライゼーション+エクササイズで
痛みや機能障害を比較することにした.

方法

取り込み基準
①18~60歳
②臀部より遠位に症状あり
スランプテスト陽性
④腰椎屈曲または腰椎伸展での症状に変化なし
⑤Oswestry Disability Index (ODI) 10%以上


除外基準
①腫瘍
②骨折
③感染症
④骨粗鬆症
⑤妊婦
⑥脊椎手術歴
⑦神経根病変あり(反射・感覚・筋力の低下)
⑧Straight Leg Raise (SLR) test 45°未満

研究方法

30名の患者がランダムに2つのグループに割り当てられた.

スランプストレッチ+腰椎モビライゼーション+エクササイズ

腰椎モビライゼーション+エクササイズ

参加者の基礎情報は以下を参照

腰椎モビライゼーション+エクササイズ

以下の治療プログラムを実施.

・5分間の静的サイクリング(ウォームアップ)

・腰椎モビライゼーション
 低可動性の腰椎に対して後方モビライゼーションを実施.
 モビライゼーションはメイトランド手技でグレード III–IVで実施.

・一般的なエクササイズ
 骨盤後傾、ブリッジ、スクワット、四つ這いでの運動

※理学療法は週2回を合計3週間実施した.
※研究期間中は毎日自主練習行うように指導.

スランプストレッチ+腰椎モビライゼーション+エクササイズ

スランプストレッチに割り当てられたグループは
腰椎モビライゼーション+エクササイズグループ同様の治療プログラム
に加えてスランプストレッチが追加された.

スランプストレッチは写真のように長座位で実施.
足関節が背屈0°になる程度に足を壁につけて、
セラピストは症状が再現されまで患者の頸部を屈曲方向に圧縮する.
この姿勢を30秒間保持を合計5回繰り返す.

スランプストレッチは自主練習でも下の写真のように
30秒保持を2回実施するように指導された.

※理学療法は週2回を合計3週間実施した.
※研究期間中は毎日自主練習行うように指導.

アウトカム

以下のアウトカムを開始時、3週(介入後)で測定した.

  • 機能:Oswestry Disability Index (ODI)
  • 痛み:NRS
結果

機能:Oswestry Disability Index (ODI)

スランプストレッチを受けたグループが優位に改善を示した.

ODIの改善度は
スランプストレッチグループは26.2%から7.9%まで改善.
モビライゼーション+エクササイズグループは24.4%から17.6%まで改善.

※ODIは重症度が増すほど高い値となります.

痛み:NRS

スランプストレッチを受けたグループが優位に改善を示した.

NRSの改善度は
スランプストレッチグループは4.0から1.7まで改善.
モビライゼーション+エクササイズグループは3.8から2.7まで改善.

解説

今回は非神経根性腰痛(non-radicular LBP)に対して
スランプストレッチの有効性を検証した論文を紹介しました.

結果としては
短期的には週2回のスランプストレッチを併用した理学療法を3週間継続することで
痛みは機能障害が改善することが示されました.

論文の筆者は考察で
SLR角度で45°未満は参加者の除外基準に設定しているため
重度の神経感受性の症例には適応できないかもしれないと述べています.

また、サンプルサイズが少ないため、今後はより多くの参加者で
スランプストレッチの有効性を検証する必要があると述べています。

近年では腰痛はサブグループに分類して治療を進める流れになっている
ため、体幹の動きによって症状が変化しない症例に関しては
スランプストレッチが有効であることがこの論文から示唆されました.

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