目的
どのような膝蓋大腿疼痛症候群(PFPS :Patellofemoral pain syndrome)患者に
仙腸関節マニュプレーションが有効かを予測するクリニカルプレディクションルールです.
ルール
- 股関節内旋可動域の左右差 が14°より大きい
- 足関節背屈可動域(膝屈曲位)が15°より大きい
- 舟状骨落下 3mmより大きい
- 20分以上の座位でstiffness(硬さ)なし
- 誘発テストの中でスクワット動作が一番痛い
仙腸関節マニュプレーション
感度・特異度・陽性尤度比・成功確率
陽性率 | 感度 | 特異度 | 陽性尤度比 | 陰性尤度比 | 成功確率 |
2以上 | 0.91 (0.71-0.99) | 0.56 (0.35-0.75) | 2.05 (1.3-2.9) | 0.16 (0.04-0.69) | 63% (50-70) |
3以上 | 0.68 (0.45-0.86) | 0.96 (0.81-1.00) | 18.4 (3.6-105.3) | 0.33 (0.17, 0.55) | 94% (68-99) |
4以上 | 0.32 (0.15-0.55) | 1.00 (0.84-1.00) | ∞ (0.90-∞) | 0.68 (0.51-0.92) | 100% (47-100) |
全て | 0.09 (0.02-0.31) | 1.00 (0.84-1.00) | ∞ (0.31-∞) | 0.91 (0.78-1.1) | 100% (20-100) |
Iversonら2008より筆者作成
陽性数 | 感度 | 特異度 | 陽性尤度比 | 陰性尤度比 |
2つ以上 | 0.72 (0.54–0.90) | 0.11 (0–0.24) | 0.8 (0.6–1.1) | 2.7 (0.6–11.4) |
3つ以上 | 0.45 (0.23–0.67) | 0.33 (0.14–0.52) | 0.7 (0.4–1.2) | 1.7 (0.8–3.3) |
4つ以上 | 0.16 (0.02–0.30) | 0.84 (0.68–1.01) | 1.0 (0.3–4.0) | 1.0 (0.8–1.3) |
全て | 0.02 (0–0.07) | 0.95 (0.85–1.0) | 0.4 (0–10.5) | 1.0 (0.9–1.2) |
Crowellら2012より筆者作成
筆者の解釈
2008年Iversonらの報告によればCPRで3つ以上当てはまれば仙腸関節マニュプレーション
後にNRSが50%以上改善またはGlobal Rating of Change questionnaire (GRC)のスコアが+4以上
改善する確率が94%になります.
PFPSの症例になぜ仙腸関節マニュプレーションを実施するのか疑問になる方もいるのでは
と思います.この論文の中ではマニュプレーションにより大腿四頭筋の筋力向上に繋がると
述べられています.
注意点としては
- 研究デザインはderivation study(モデル作成段階)なので内的妥当性が不十分
- アウトカムは即時的アウトカムのみで長期的な効果は不明
- マニュプレーションは治療スキルが必要
2012年Crowellらは2008年Iversonらの論文をもとにPFPSの症例に対して
仙腸関節マニュプレーションを実施することで股関節内旋可動域や股関節周囲の
筋力に変化があるかを検証しました.
結果としては股関節内旋角度は1.8°優位に減少しましたが、股関節伸展筋力は0.5kg、
外転筋力は0.6kg優位に減少が認められました.筆者の考察としてはテスト測定に伴う
疲労が関与しているのではと考察しています.
結論としてはIversonらの論文を支持するエビデンスはなくさらなる検証が必要であると
しているます.
引用文献
- Iverson et al. Lumbopelvic Manipulation for the Treatment of Patients With Patellofemoral Pain Syndrome: Development of a Clinical Prediction Rule .journal of orthopaedic sports physical therapy.2008
- Crowell et al. Lumbopelvic manipulation in patients with patellofemoral pain syndrome.
Journal of Manual and Manipulative Therapy.2012
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