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腱板断裂(棘上筋)に対するリハビリテーション【理学療法vs肩峰形成術vs腱板修復術】

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タイトル

Treatment of non-traumatic rotator cuff tears: A randomised controlled trial with one-year clinical results

DOI: 10.1302/0301-620X.96B1.32168

研究デザイン

ランダム化比較試験

目的

本研究の目的は非外傷性の腱板断裂の患者に対して
①理学療法
②肩峰形成術+理学療法
③腱板断裂修復術+肩峰形成術+理学療法
の3つを比較して1年後のアウトカムを比較することである.

方法

取り込み基準
①55歳以上
②非外傷性の棘上筋単独の断裂損傷(MRIにて)
③可動域制限なし


除外基準
①55歳以下
②回旋筋腱板の複合断裂
③肩甲上腕関節の可動域制限(挙上120°以下、外旋30°以下)
④全身性疾患
⑤肩関節の手術歴
⑥薬物疾患、精神疾患

研究方法

180名の患者がランダムに3つのグループに割り当てられた

理学療法グループ(グループ1)

肩峰形成術+理学療法グループ(グループ2)

腱板断裂修復術+肩峰形成術+理学療法(グループ3)

患者の基礎情報は以下を参照

グループ1:理学療法で グループ2:肩峰形成術+理学療法 グループ3:腱板断裂修復術+肩峰形成術+理学療法

研究の流れは以下を参照

グループ1:理学療法で グループ2:肩峰形成術+理学療法 グループ3:腱板断裂修復術+肩峰形成術+理学療法
理学療法グループ(グループ1)

エクササイズプロトコルに準じて自宅で行えるエクササイズを指導.
エクササイズが正しく行えているか継続的に合計10回の理学療法
を受けた.

最初の6週間
肩甲上腕関節の動きの改善や肩甲帯の内転の運動を実施.

6週~12週間
肩甲上腕関節と肩甲骨の静的・動的なエクササイズを実施.

その後は6カ月間の抵抗下での筋力トレーニングを実施.

肩峰形成術+理学療法グループ(グループ2)

鏡視下での肩峰形成術を実施後に3週間の理学療法を実施.

主な内容は肩甲上腕関節の動きの改善や肩甲帯内転の運動を実施.

3週間での理学療法が終了後は
グループ1と同様のホームエクササイズを指導した.

腱板断裂修復術+肩峰形成術+理学療法(グループ3)

手術後は3週間はスリングを使用して固定期間を設定.

その後はグループ1と同様にホームエクササイズを指導した.

アウトカム

以下のアウトカムを開始時3カ月6カ月1年で測定した.

  • Constant score
結果

Constant score

1年後のConstant scoreの値は
理学療法(グループ1):74.1点
肩峰形成術+理学療法グループ(グループ2)77.2点
腱板断裂修復術+肩峰形成術+理学療法(グループ3)77.9点

3つのグループで比較すると3群間での優位差はなし.

Constant scoreの下位尺度:痛み

グループ2とグループ3で優位な改善を示した.

Constant scoreの下位尺度:ADL

グループ2とグループ3で優位な改善を示した.

Constant scoreの下位尺度:可動域

3群間で優位差はなし.

Constant scoreの下位尺度:筋力

3群間で優位差はなし.

解説

今回は非外傷性の棘上筋断裂損傷に対しての理学療法と手術で
1年後のアウトカムを比較した論文を紹介しました.

結果としてConstant scoreの数値は
3つのグループで優位差はなく、1年後の機能は同様であることが
示されました.

Constant scoreとは肩関節機能の評価スケールで100点満点で示します.
構成は痛み、ADL、可動域、筋力の4つの尺度で構成されています.

今回の論文ではConstant scoreの総合点数は
3つのグループで優位差はありませんでしたが、
下位尺度である疼痛とADLは手術した方が優位な改善を示しています.

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