Pain-Free Versus Pain-Threshold Rehabilitation Following Acute Hamstring Strain Injury:
A Randomized Controlled Trial
ランダム化比較試験
今回の研究の目的は急性のハムストリングス損傷患者に対して
痛みを伴わないリハビリテーション(Pain-free group)と痛みを許容する
リハビリテーション(Pain-threshold group)でスポーツ復帰の日数、等速性膝屈筋力、
筋束長回復、動作時の恐怖感、再発予防を6カ月のフォローアップで検証することである.
取り込み基準
①18~40歳
②発症後7日以内
③損傷したハムストリングスに圧痛あり
④ハムストリングスの収縮時痛あり
除外基準
①ハムストリングス損傷以外の大腿後面の痛み
②完全断裂
③外科手術が必要
43名の患者がランダムに2つのグループに割り当てられた.
痛みを伴わないグループ:Pain-free group
痛みを許容するグループ:Pain-threshold group


全ての参加者は週に2回のハムストリングスの筋力トレーニングと漸増的なランニング
を含む標準的なリハビリテーションを実施した.
2つのグループの唯一の違いはリハビリテーション中の痛みの程度である.
Pain-free groupはNRS 0で実施、Pain-threshold groupはNRS 4以下で実施.
ハムストリングスの筋力トレーニングは遠心性トレーニングにて実施した.
・両側性または一側性のハムストリングスのブリッジ
・45° hip extension
・両脚または片脚eccentric slider
・ノルディック・ハムストリングス

漸増的なランニングは以下の9ステージのプロトコルを使用した.
ジョグは50%、ランニングは70%、スプリントは100%
の強度で行うよう実施した.
次のステージへの基準は3回繰り返しての痛みの程度とした.

参加者はスポーツ復帰基準を満たすまで週2回のリハビリテーション
を実施した.
・圧痛なし
・自動膝伸展または他動SLRの可動域左右差が90%以上改善
・最大等尺性膝屈筋収縮で痛みなし
・スプリント動作で痛みなし
以下のアウトカムを2カ月と6カ月で測定した.
- スポーツ復帰の日数:プライマリーアウトカム
- 等速性膝屈筋力
- 筋束長回復
- 運動恐怖尺度:Tampa Scale of Kinesiophobia(TSK)
- 6カ月以内の再発率
スポーツ復帰の日数
両群間で優位差なし.
基準を満たした日数は
痛みを伴わないグループの中央値は15日
痛みを許容するグループの中央値は17日
等速性膝屈筋力
股関節・膝関節0°の角度での等速性膝屈筋力
両群ともに優位に改善したが、両群間で優位差なし.
股関節・膝関節90°の角度での等速性膝屈筋力
痛みを許容するグループで優位に筋力の改善があった.
筋束長回復
2カ月のフォローアップでは
痛みを許容するグループの方が優位に優れていた.
運動恐怖尺度:Tampa Scale of Kinesiophobia(TSK)
両群間で優位差なし.
6カ月以内の再発率
両群間で優位差なし.
今回はハムストリングス損傷に対して
痛み伴わない運動(NRS 0)と許容する運動(NRS 4以下)を比較した研究です.
結果としては痛みを許容したグループの方が
等速性膝屈筋力と筋束長回復は優位に改善が示されました.
しかし、プライマリーアウトカムであるスポーツ復帰の日数
に関しては両群間で優位差はありませんでした.
今回の論文から急性のハムストリングス損傷に対しては痛みが
ない程度でリハビリテーションをする必要はなく、むしろ
痛みを許容した方が筋力改善に有効であることが示唆されました.

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