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ハムストリングス損傷【痛みがない運動 vs 痛みを許容する運動】

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タイトル

Pain-Free Versus Pain-Threshold Rehabilitation Following Acute Hamstring Strain Injury:
A Randomized Controlled Trial

DOI: 10.2519/jospt.2019.8895

研究デザイン

ランダム化比較試験

目的

今回の研究の目的は急性のハムストリングス損傷患者に対して
痛みを伴わないリハビリテーション(Pain-free group)と痛みを許容する
リハビリテーション(Pain-threshold group)でスポーツ復帰の日数、等速性膝屈筋力、
筋束長回復、動作時の恐怖感、再発予防を6カ月のフォローアップで検証することである.

方法

取り込み基準
①18~40歳
②発症後7日以内
③損傷したハムストリングスに圧痛あり
④ハムストリングスの収縮時痛あり


除外基準
①ハムストリングス損傷以外の大腿後面の痛み
②完全断裂
③外科手術が必要

研究方法

43名の患者がランダムに2つのグループに割り当てられた.

痛みを伴わないグループ:Pain-free group
痛みを許容するグループ:Pain-threshold group

患者情報
リハビリテーションプロトコル

全ての参加者は週に2回ハムストリングスの筋力トレーニング漸増的なランニング
を含む標準的なリハビリテーションを実施した.

2つのグループの唯一の違いはリハビリテーション中の痛みの程度である.
Pain-free groupはNRS 0で実施、Pain-threshold groupはNRS 4以下で実施.

ハムストリングスの筋力トレーニングは遠心性トレーニングにて実施した.
・両側性または一側性のハムストリングスのブリッジ
・45° hip extension
・両脚または片脚eccentric slider
ノルディックハムストリングス

漸増的なランニングは以下の9ステージのプロトコルを使用した.
ジョグは50%、ランニングは70%、スプリントは100%
の強度で行うよう実施した.
次のステージへの基準は3回繰り返しての痛みの程度とした.

参加者はスポーツ復帰基準を満たすまで週2回のリハビリテーション
を実施した.

スポーツ復帰の基準

・圧痛なし
・自動膝伸展または他動SLRの可動域左右差が90%以上改善
・最大等尺性膝屈筋収縮で痛みなし
・スプリント動作で痛みなし

アウトカム

以下のアウトカムを2カ月と6カ月で測定した.

  • スポーツ復帰の日数:プライマリーアウトカム
  • 等速性膝屈筋力
  • 筋束長回復
  • 運動恐怖尺度:Tampa Scale of Kinesiophobia(TSK)
  • 6カ月以内の再発率
結果

スポーツ復帰の日数

両群間で優位差なし.

基準を満たした日数は
痛みを伴わないグループの中央値は15日
痛みを許容するグループの中央値は17日

等速性膝屈筋力

股関節・膝関節0°の角度での等速性膝屈筋力
両群ともに優位に改善したが、両群間で優位差なし.

股関節・膝関節90°の角度での等速性膝屈筋力
痛みを許容するグループで優位に筋力の改善があった.

筋束長回復

2カ月のフォローアップでは
痛みを許容するグループの方が優位に優れていた.

運動恐怖尺度:Tampa Scale of Kinesiophobia(TSK)

両群間で優位差なし.

6カ月以内の再発率

両群間で優位差なし.

解説

今回はハムストリングス損傷に対して
痛み伴わない運動(NRS 0)と許容する運動(NRS 4以下)を比較した研究です.

結果としては痛みを許容したグループの方が
等速性膝屈筋力と筋束長回復は優位に改善が示されました.


しかし、プライマリーアウトカムであるスポーツ復帰の日数
に関しては両群間で優位差はありませんでした.

今回の論文から急性のハムストリングス損傷に対しては痛みが
ない程度でリハビリテーションをする必要はなく、むしろ
痛みを許容した方が筋力改善に有効であることが示唆されました.

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