研究論文を読むうえで研究デザインを理解する必要があります。
研究する中で調べたい内容によって研究の方法が変わってくるからです。
よって論文を読む際はどんな研究デザインなのかを
把握した状態で論文を読む必要があります。
研究デザインは大きく2つに分かれます
・介入研究
・観察研究
介入研究について
研究者が治療など手を加える研究のことを介入研究と呼びます。
治療法の効果や予防方法を知りたいときに使われる手法です。
介入研究は主に4つの研究デザインが使われます。
- ランダム化比較試験
- 非ランダム化比較試験
- クロスオーバー試験
- 前後比較試験
ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial: RCT)
治療以外の背景因子(年齢、性別、重症度など)が全て公平になるように対象を
ランダムに群分けして治療の効果を調べる研究となります。
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2020/11/cats-43.jpg)
メリット
ランダムに割り付けることで治療以外の要素を平等にすることで
研究の信頼性が高くなります。
非ランダム化比較試験(non-Randomized Controlled Trial: non-RCT)
RCTの研究が非現実的または倫理的に困難である場合は
ランダムに割り付けないで対象を分類します。
メリット
倫理的に必ずしてもRCTが行える場合でないため
そのような際は非ランダム化比較試験が有効です。
クロスオーバー試験(交差試験)
対象者を介入群とコントロール群に分けて介入を行います。
治療が終了したら、両群で治療法を交換して介入します。
介入の効果をリセットするために一回目の治療が終わったら
ウォッシュアウト期間を設ける必要があります。
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2020/11/cats-44.jpg)
メリット
- 同一の患者を対象にするため比較するグループ間の背景の違いは生じない
- 少ない症例で2つの治療効果を比較できる
デメリット
変化が生じやすい急性期に対しては1回目の治療がウォッシュアウト期間後も
生じる可能性がある
前後比較試験
個人または集団を対象に介入の前後で結果(アウトカム)を比較します。
メリット
介入の前後を比較するだけなので簡易的に行える
デメリット
対象群がないためバイアスがある
観察研究について
事実を観察するだけで手を加えない研究を観察研究と呼びます。
要するにデータを収集して明らかにしたいことを研究します。
観察研究は主に3つの研究デザインが使われます。
- 横断研究
- コホート研究
- 症例対照研究
横断研究
時間の流れを考慮しないで、ある時点でのデータを分析する手法です。
疾患の有病率や頻度、診断特性(感度・特異度など)を知りたいときに
使用される研究デザインです。
メリット
- 時間・経費的に効率が良い
- 様々な要因を一度に測定できる
デメリット
- バイアスの影響が入りやすい
- 原因と結果の因果関係が明確ではない
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2020/11/cats-47.jpg)
コホート研究
研究開始時点では疾患のない集団を対象に
暴露群と非暴露群に分けて行ってある一定期間観察して、予後や危険因子などを
調べる際に用いられる手法です。
データを現在から未来にかけて調査するため「前向き研究」の一種です。
疾患の予後、疾患の原因を知りたいときに使用される研究デザインです。
メリット
- 原因に対する結果の観察に優れている
- 対象者の割り付け時に背景因子をマッチングすることで選択バイアスの
影響を避けることができる
デメリット
- 時間がかかる
- 追跡できない対象者が出てくる
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症例対照研究(ケースコントロール研究)
対象を患者群と対照群に分けて、疾患の特徴、暴露の有無、背景因子の違いを
比較する手法です。
データを現在から過去にさかのぼって調査するため「後ろ向き研究」の一種です。
メリット
- 時間的・経費的効率が良い
- すでに発症している症例を利用するため研究期間が短い
- 稀な疾患に適している(すでに発症している人が対象のため)
デメリット
- 選択バイアスが入りやすい
症例と対象の結果が分かっているので割り付け時にバイアスが入りやすい - 過去の情報であるため暴露状況が曖昧となりやすい
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2020/11/cats-46.jpg)
一次情報と二次情報を理解しよう
論文には一次情報と二次情報があります。
一次情報とは
一次情報とは原著論文と呼ばれ、研究を行った人が研究方法や結果を
示しながら、独自の結論を出すものです。
介入研究と観察研究はこの一次情報に含まれています。
二次情報とは
二次情報とは一次情報をまとめて集約した結果を報告する研究です。
システマティックレビューや理学療法ガイドラインなどが二次情報にあたります。
RCTなど個々の研究を集めて、その結果を統合し、治療の有効性および効果の大きさ
を示すことができます。
システマティックレビューのフローチャートの一例
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2020/11/cats-49.jpg)
一次情報と二次情報のメリット・デメリット
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2020/11/cats-50.jpg)
エビデンスレベルの階層・ピラミッド
臨床で働いているとエビデンスが高い、エビデンスが低いと
聞いたことがある方もいると思います。
エビデンスが高い・低いの基準は
どこまで信頼性・妥当性が高いのかになります。
よって一次情報(原著論文)をまとめた二次情報がエビデンスレベルの高い研究となります。
二次情報は第三者が原著論文を系統的にまとめた研究のためバイアスの影響が少なく、
エビデンスが高い研究となります。
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2020/11/cats-51.jpg)
まとめ
調べたい内容によって研究デザインが異なります。
研究デザインには大きく介入研究と観察研究に分かれます。
理学療法の治療効果を調べたいときにはランダム化比較試験が
エビデンスレベルの高い研究デザインとなっています。
臨床で疑問を感じたらまずはエビデンスレベルが高い、
二次情報を探してみましょう。
二次情報がヒットしない・見つからない場合は、
次にランダム化比較試験などエビデンスが高い順番
で情報を収集することでエビデンスの高い治療を提供
できると思います。
一次情報
介入研究
- ランダム化比較試験
- 非ランダム化比較試験
- クロスオーバー試験
- 前後比較試験
観察研究
- 横断研究
- コホート研究
- 症例対照研究
二次情報
- システマティックレビュー
- メタアナリシス
![](https://rehabilitation01.com/wp-content/uploads/2020/11/cats-48.jpg)
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