Outcome of corticosteroid injection versus physiotherapy in the treatment of mild trigger fingers
ランダム化比較試験
ばね指の治療は保存療法と手術に分類される.
保存療法はアイシング、スプリント(装具)、ステロイド注射、理学療法などがある.
手術療法は腱鞘切開術がある.
いくつかの論文でステロイド注射と手術(経皮的腱鞘切開術)の比較やステロイド注射とスプリントの比較はあるが、ステロイド注射と理学療法の比較研究は存在しない.
そこで今回の研究の目的はステロイド注射と理学療法の有効性を比較して検証することである.
取り込み基準
①20歳以上
②grade 0~2までの分類に当てはまる
Quinnell grading system
grade 0:正常な指の動き
grade 1:不均等な指の動き
grade 2:自動でロッキングを解除可能
grade 3:他動でロッキングを解除可能
grade 4:固定されてロックした状態
除外基準
①小児のばね指
②先天性・外傷性のばね指
③2次的原因(腱の腫瘍や腱の滑膜炎など)
74名の患者がランダムに理学療法グループと注射グループに割り当てられた.
- 温熱療法
- 超音波治療
- ストレッチ
- マッサージ
上記の理学療法を10セッション実施した.
以下のアウトカムを6週間(介入後)と3カ月時点でフォローアップした.
- VAS
- 引っかかりの回数
10回の複合屈曲・複合伸展で評価 - 機能
シャツのボタン開閉、缶/瓶の開封、指の完全屈曲、衣服/皿の洗い動作 - 握力
- 患者の満足度
3カ月時点での痛みや引っかかりの改善 - 再発率
6カ月時点で電話での痛みや引っかかりのインタビュー
痛み
両群ともに6週間、3カ月時点で痛みは優位に改善.
理学療法グループは初期のVAS 4.6、6週 3.17、3カ月1.77まで改善
手術グループは初期のVAS 6.69、6週 0.62、3カ月 0.44まで改善

この図からは分かるように注射グループの方がVASの改善が優れています.
引っかかりの回数
両群ともに10回の自動複合伸展/複合屈曲での引っかかりの回数は優位に改善.

この図から注射グループの方が引っかかりの回数が改善していることが分かります.
握力
両群ともに握力は優位に改善.
理学療法グループは3カ月で3.47kg改善
注射グループは3カ月で6.03kg改善

患者の満足度
6週間
理学療法グループ:満足 65.7% とても満足 2.9%
注射グループ:満足 82.1% とても満足 15.4%
3カ月
理学療法グループ:満足 74.3% とても満足 2.9%
注射グループ:満足 66.7% とても満足 30.8%

この図から注射グループの方が満足度が高いことが分かります.
再発率
6カ月時点での再発率は
痛みの再発は理学療法グループで0%、注射グループで15.8%
引っかかりの再発は理学療法グループで0%、注射グループで10.5%
注射グループは理学療法グループより再発率が高い傾向にあります.
今回の研究を通して理学療法とステロイド注射を比較すると
注射のほうが痛み、引っかかり回数、握力改善、患者満足度が高い結果となりました.
しかし、再発リスクの観点からは理学療法の方が再発を予防できることが
示唆されました.

コメント