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肩関節周囲炎に対するモビライゼーションの有効性

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タイトル

Does adding mobilization to stretching improve outcomes for people with frozen shoulder? A randomized controlled clinical trial


DOI: 10.1177/0269215515597294

研究デザイン

ランダム化比較試験

目的

肩関節周囲炎に対して関節モビライゼーションの有効性はいくつかの論文で報告されてる.関節モビライゼーションとホームエクササイズの併用や関節モビライゼーションと可動域訓練の併用の効果の報告は多数あるが、関節モビライゼーションとストレッチとストレッチ単独の研究はない.
よって今回の研究の目的は関節モビライゼーションとストレッチの併用により可動域、痛み、機能障害の改善に有効なのかを検証することである.

方法

取り込み基準
①可動域(屈曲、外転、外旋)が健側より50%以上差がある
②レントゲンは異常なし
③症状が3カ月以上継続している


除外基準
①頚椎症性神経根など放散痛がある
②糖尿病
③胸郭出口症候群
④リウマチ
⑤骨折または腫瘍がある
⑥神経学的な筋力低下がある
⑦4週間以内にステロイド注射の経験がある
⑧腱板断裂

研究デザイン

30名の患者はランダムに以下の2つ群に割り当てられた.

グループ①
関節モビライゼーション(30分)+ストレッチ(20分)+ホームエクササイズ

グループ②
ストレッチ(20分)+ホームエクササイズ


1週間に3回の理学療法を6週間行った.

関節モビライゼーションの内容

肩甲上腕関節の離開(distraction)、尾側滑り( caudal glide)、後方滑り(posterior glide)、
前方滑り( anterior glide)をGrade IまたはIIで関節が弛緩したポジションで実施した.
徐々に制限された方向でGrade IIIとIVで耐えられる痛みの範囲で実施した.

ストレッチの内容

20秒のストレッチ、10秒の休憩を以下の方向で10回行った.

  • 屈曲
    肩甲骨を固定した状態で屈曲方向のストレッチ
  • 外転(肩甲骨面)
    肩甲骨を固定した状態で外転方向のストレッチ
  • 外旋(肩甲骨面)
    肘を屈曲させた位置で外旋方向のストレッチ
  • 内旋(肩甲骨面)
    肘を屈曲させた位置で内旋方向のストレッチ
ホームエクササイズ

1日2回 のストレッチと筋力運動を指導.

  • 屈曲方向のストレッチ
  • 外転方向のストレッチ
  • 内旋方向のストレッチ(sleeper stretch)
  • 後方関節包ストレッチ
  • 肩甲骨内転筋トレーニング(ゴムチューブ使用)
  • 外旋筋トレーニング(ゴムチューブ使用)
  • 伸展筋トレーニング(ゴムチューブ使用)
  • 壁・テーブルでのプッシュアップ
アウトカム

以下のアウトカムをベースラインと6週(介入後)、1年でフォローアップした.

Primary outcomes

  • Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand Score
  • Constant scale:痛み、可動域、筋力を100点満点で評価

Secondary outcomes

  • 可動域(屈曲、外転、外旋、内旋)
  • VAS
結果

関節モビライゼーションとストレッチを併用したグループでConstant scale、外転可動域、
外旋可動域に優位な改善を示した.この結果は1年後のフォローアップでも継続した.

考察

今回の研究で関節モビライゼーションとストレッチの併用はストレッチ単独よりConstant scale、外転、外旋の可動域に有効であることが示唆された.


Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand Scoreは有意差がなく、Constant scaleに優位な結果が示された推測としては、Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand Scoreは主に日常生活の評価であり、可動域の評価が含まれていない点が考えられる.

解説

今回の論文では肩関節周囲炎に対して関節モビライゼーションとストレッチの併用により
Constant scaleと可動域(外転、外旋)の改善に有効であることが示唆された.

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