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システマティックレビュー・メタアナリシスの読み方

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今回はシステマティックレビューとメタアナリシスについて紹介します。

システマティックレビューとメタアナリシスはエビデンスレベル
が最も高い研究デザインです。

そこでシステマティックレビューの正しい読み方を初心者でも
分かりやすく説明したいと思います。

システマティックレビューとは

システマティックレビューは「系統的レビュー」とも呼ばれています。

臨床の疑問(clinical question)に対して全ての研究を網羅的に調査して
全てのエビデンスを収集するような研究デザインとなります。

簡単に言うとランダム化比較試験など(一次情報)をたくさん集めて、
結果をまとめて報告するような研究(二次情報)となります。

メタアナリシスとは

メタアナリシスは「メタ分析」・「メタ解析」とも呼ばれています。

メタアナリシスとは過去に行われたたくさんの研究結果を統計学の手法を用いて
まとめて、全体的にどのような傾向があるかを調べる研究となります。

システマティックレビューとメタアナリシスは同じものか

広い意味では
システマティックレビューとメタアナリシスは同じもであると
考えても大丈夫です。

細かく言うと
メタアナリシスはシステマティックレビューの「統計解析」にあたる部分であるため
メタアナリシスはシステマティックレビューの一部となります。

システマティックレビューの特徴

  • 目的が明確で事前に決められた取り込み基準と除外基準にしたがって
    論文を収集をしている
  • 論文を網羅的に集めている
  • 採用した論文の質を評価している(リスクオブバイアスの評価)
  • 採用した論文の結果を統合している

なぜシステマティックレビューを読むのか

一つの研究だけでなく、たくさんの研究をまとめて統合するため
全体像を把握することができます。

一つだけの研究では研究者のバイアスが入ってしまう可能性もあるため
第三者がたくさんの研究を集めて、バイアスの評価をして結果を
まとめるので信頼性が高くなります。

バイアスについてはこちらの記事で解説しているので
参考にしてみて下さい。

システマティックレビューが出来るまでの流れ

システマティックレビュー・メタアナリシスのここを見よう

システマティックレビューで読むべきポイントを2つ説明します。

リスクオブバイアスの評価方法

Forest plot(フォレストプロット)のグラフを正しく読む

システマティックレビューの過程で

研究の質を評価する(リスクオブバイアスの評価)
結果の統合(フォレストプロットのグラフ)

上記の2点を正しく理解する必要があります。

研究の質を評価する(リスクオブバイアスの評価)

システマティックレビューはたくさんの研究を網羅的に集めて、結果を統合して
全体像を把握することが出来ますが、集められた研究の質(妥当性)を評価
することが重要となります。

集められた研究の質が低いと最終的に結果を統合しても、その信頼性が低く
なってしまうからです。

システマティックレビュー作成者によって
リスクオブバイアスの評価方法は異なります。

主に使われているリスクオブバイアスの評価方法は

GRADE system(グレードシステム)
PEDro scale(ペドロスケール)

この2つが使われています。
(これ以外にも色んな評価方法があります)

GRADE system(グレードシステム)について

GRADE systemでは集めた論文にどれほどのバイアスがあるのかを
項目ごとに評価して視覚的に見やすくしたもととなります。

主な評価の項目はこちらになります。

各項目によって信号機の色でビジュアル化されます。

この表を見ることで個々の論文がどのようなバイアスを含んでいるのか
良く分かります。
(Risk of bias summaryと専門用語では呼ばれています。)

また、システマティックレビューによっては
システマティックレビュー全体のバイアスをグラフにしている場合もあります。

このグラフを見ることで集められた論文がどれほどのバイアスがあるのか
良く分かります。
(Risk of bias graphと専門用語では呼ばれています。)

緑の割合が多いほど、バイアスが少ない研究が多いということになります。

参考までにこちらの2つの論文がGRADE system(グレードシステム)に
基づいたシステマティックレビューとなっています。

Comparison of Arthroscopic Partial Meniscectomy to Physical Therapy following Degenerative Meniscus Tears: A Systematic Review and Meta-analysis
PMCID: PMC7073498 DOI: 10.1155/2020/1709415

Effectiveness of early compared with conservative rehabilitation for patients
having rotator cuff repair surgery: an overview of systematic reviews
DOI: 10.1136/bjsports-2016-095963

PEDro scale(ペドロスケール)について

PEDro(ペドロ)とは海外の論文を検索するサイトです。
その運営しているサイトがPEDro scaleと呼ばれるチェックリスト
に基づいて論文の質を客観的に評価しています。

システマティックレビューによってはペドロスケールに
基づいて論文の質を評価しています。

参考までにこちらの2つの論文がPEDro scale(ペドロスケール)に
基づいたシステマティックレビューとなっています。

Cervical Radiculopathy: Effectiveness of Adding Traction to Physical Therapy-
A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials
DOI: 10.1093/physth/pzy001

Effectiveness of Nerve Gliding Exercises on Carpal Tunnel Syndrome:
A Systematic Review
DOI: 10.1016/j.jmpt.2016.10.004

ここまでをまとめると
システマティックレビューを読むポイントとして
論文の質(リスクオブバイアス)をどのように

評価しているの確認しましょう。

Forest plot(フォレストプロット)のグラフを正しく読む

Forest plot(フォレストプロット)とは下にあるようなグラフのことを呼びます。

システマティックレビューの良いところはこのフォレストプロットを読むだけで
簡単に結果の概要を判断できるところです。

フォレストプロットの読み方はこちらになります。

フォレストプロットを読む際は

統合された結果の優位性
統合された結果の大きさ(点推定値と信頼区間)
研究間の違い(統計学的異質性の表記)

この3つを意識して読みましょう。

こちらの論文を参考に3つのポイントを説明します。

統合された結果の優位性

◆が縦軸の0の線(縦軸)に
交差している場合:有意差なし
交差していない場合:有意差あり

今回の研究では縦軸を交差していないため「有意差あり」となります。

統合された結果の大きさ(点推定値と信頼区間)

優位であるかを確認したら次は効果量を確認します。
効果量とはサンプルサイズに依存しないで、効果の程度を表すことが出来ます。

効果量にもいくつかの種類があります。
本文を読むと効果量の定義が明記されていいます。

今回の研究では
標準平均値差(効果量)は0.74で95%信頼区間は0.41~1.07となります。

研究間の違い(統計学的異質性の表記)

結果が研究同士で似ているかを確認します。

フォレストプロットの中に
Heterogeneity(異質性)とI2の表記がありますが、これは
研究間で異質性があるかを判断する指標となります。

研究によって効果量が異なる
→異質性が大きい(ばらつきが大きい)

研究によって効果量に大差がない
→異質性が小さい(ばらつきが小さい)

ばらつきを評価するための統計的検定(異質性検定)は
I2検定と呼ばれ、ばらつきの程度を%で表します。

0~25%:異質性は低い
25~50%:中等度の異質性あり
50~75%:高い異質性あり
75~100%:重大な異質性あり

今回の研究では
I2=76.87%であるため異質性は大きいとなります。

異質性が高い場合は研究間のばらつきがあることを示しているので
メタアナリシスされた結果は信頼性が低くなります。

まとめ

今回はシステマティックレビュー・メタアナリシスについての読み方を
説明しました。

システマティックレビューは第三者が一次情報をまとめた研究であるため
エビデンスレベルは最も高い研究となります。

忙しいときにはシステマティックレビューから全体的な治療効果を
見ることで分かりやすく結果を知ることが出来ます。

しかし、システマティックレビューを読む際は

・リスクオブバイアスの評価方法を確認する
・フォレストプロットを正しく読む

上記2点を意識して読む必要があります。

この機会にシステマティックレビューをリンクで貼っているので
ぜひ読んでみて下さい。

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コメント

  1. 山口研成 より:

    すっごく勉強になりました。
    naoyaさんは研究施設に勤務すべきです。

    • naoyanaoya より:

      コメントありがとうございます。

      そして、ブログを読んでいただきありがとうございます。

      今後も理学療法士に向けた有益な情報を配信していくので
      今後ともよろしくお願いいたします。